
イラスト/中村 隆
笑う。泣く。絡む。怒る。酒グセは人それぞれだ。それにしても、こうした酒グセが人によって異なるのはなぜだろう。また、年齢や成長(?)によって変化することもあるのだろうか。
『アルコール依存の人はなぜ大事なときに飲んでしまうのか』(阪急コミュニケーションズ)の著者で、アルコール関連の治療を専門とする、まいんずたわーメンタルクリニック院長・仮屋暢聡先生に聞いてみた。
「ベースとなるのは、それぞれの気質でしょうね。ドイツの精神医学者・クレッチマーは体型と性格で3つのタイプに分類しています。肥満型=社交的、細長型=非社交的、がっちり型=几帳面という具合にです」
例外はあるが、こうした要素が心情と絡み合うことで酒グセとして表出するのだという。
「アルコールは感情の抑制を外すので、ここへ現在置かれている環境や心理状態という要素が加わります。楽しいことが続けば陽気な酒に、ストレスが溜まっていると愚痴っぽくなるわけです。とくに、喜怒哀楽の激しい人はその時々の精神状態で笑い上戸にもなるし、泣き上戸にもなりますね」
さらに、願望充足の面もあり、キス魔は欲求不満、脱ぎグセは解放欲求。説教を始めるのはコンプレックスの裏返しなんだそう。
「要注意なのは、電話やメールを発信して翌日に覚えていないタイプ。これは医学用語で『テレフォニスト』といって、アルコール依存症の一歩手前かもしれません。また、酒乱の場合は遺伝的に受け継ぐケースが多いです」
いずれにせよ、酒グセは自身の気質と現在の環境に左右される。直したいのであれば、今の生活を改善することが第一歩のようだ。
そういえば、先生は何上戸ですか?
「もともとは明るい酔い方でしたが、最近は奥さんに『くどくなった。同じ話を繰り返す』と怒られます。知らないうちにストレスが溜まっているのかも(笑)」
(石原たきび)