毎日新聞校閲グループ“中の人”「校閲の面白さ伝えたい」

若手の記者とともにアカウントを運営する大木さん。アカウントの開設時にはTwitter初心者だったそうだ

今年で創刊145周年を迎える全国紙「毎日新聞」。読者の信頼に応えるため、日々紙面をチェックしている「毎日新聞・校閲グループ(@mainichi_kotoba)」のTwitterアカウントが人気だ。新聞社だからこそできる「(今日は)何の日」や漢字クイズなどのツイートを毎日更新し、フォロワー数は4万を超える。

“ことばのプロ”がTwitterのアカウントを開設したきっかけとは? 「中の人」を訪ねた。


■「ニッチなアカウント」のはずが、初日に2000フォロワー達成


東京・竹橋にある毎日新聞東京本社で取材に応じてくれたのは校閲グループ副部長の大木達也さん。この道20年のベテラン校閲記者だ。校閲グループには東京だけでも40人ほどの記者が所属しており、公式アカウントは大木さんほか若手社員5~6人で運営しているという。

―― まず、アカウントを始められたきっかけを教えてください。

「2008年11月から、毎日新聞の紙面で毎週月曜日に『週刊漢字』というクイズコーナーが始まり、公式ニュースサイトでも問題を出して読者の方に答えてもらっていたんです。私もチェックの担当だったのですが、この『クイズを出して短文で解説する』という記事の形式がTwitterにぴったりなのでは…と考えたのがきっかけです。ただ、私は自分のアカウントも持っていない初心者だったので、当初は毎日新聞のメインアカウント(@mainichi)を管理している同僚に使い方や投稿する頻度など、いろいろ相談しながら運用していました」(大木さん、以下同)

紙面に掲載された「週刊漢字」はスクラップして保存しているという


―― 漢字クイズの問題も校閲グループで作っているのですか?

「そうですね。時事や季節、直近のニュースなどにまつわる漢字を選んでクイズにしています。これまで2000問以上、出題していますが、難問・奇問はあまり出さないようにしています。はじめは、こんなニッチなツイートはみんながおもしろがるものじゃないだろうし、長期的に運営して1000くらいのフォロワーがついてくれたら良しとしようと思っていたのですが、開始当日に毎日新聞のアカウントで紹介してもらったことで、初日だけで2000フォロワーを達成して驚きました」


■投稿は必ず事前に校閲。ネタツイートは「向いていないです」


―― 校閲というお仕事柄、ツイートする時には誤字・脱字、日本語の誤用などにも神経を使われるのでは?

「そうですね。ただ、投稿する前に必ずチェックしているので、内容が根本的に間違っていることはあまりないと思います」

―― ツイートの文章も事前に「校閲」していると。

「基本的に、担当者が思いついたことを書いてそのまま出すようなことはしません。必ず何人かの目を通してから投稿するようにしています」

―― さすが、徹底されていますね。ただ、時にはふと思いついたおもしろいネタを投稿したくなったりはしませんか?

「他社の企業アカウントを見ていると、おもしろいツイートをしていたり、フォロワーの方と軽妙なやりとりをしていたりと、楽しいだろうなと思うこともあります。でも、私にはそんなスキルはないので(笑)。じつは、最初はおもしろいツイートをしようと試みたこともあったのですが、いざ送信ボタンを押すとなると何時間も悩んでしまって…。これは本業に差し障るなと思ってやめました」

―― つまり、ネタツイートをやろうと試みたことはあると。

「あります。でも向いていないです(笑)」


■どちらの表記が正しい?の疑問に答えるアカウント



―― 近頃は校閲者を主人公にしたドラマの影響もあり、「校閲」という言葉が世間に浸透しましたが、アカウント開設時(2011年5月)はそんな仕事があること自体、知らない人が多かったのでは?

「そうですね。そもそも校閲グループは外部に何かを発信する部署ではありませんでしたから。しかし、今では“校閲”自体もコンテンツとなりうるのではないかと思っていますし、そのおもしろさを伝えていきたい」

―― 確かに、Twitterでは実際の紙面に入った赤字(直し)も公開されていて、漢字クイズ以上にリツイートされる人気コンテンツになっていますね。

「もともと社内では、記事に赤字を入れたものをまとめて、『今月はこんな間違いがありました。皆さん気を付けましょう』という社内報を作っていたんです。その一部を公開してみたら、思いのほか反響が大きかった。校閲したものを皆さんと共有することによって、何かの役に立てば、と思っています」

―― 新聞の読者も、赤字が入った原稿はなかなか見る機会がないですもんね。では、これまでに特に反響が大きい「校閲ツイート」は?

「たとえば新聞では『美味しい』を『おいしい』と表記するように、一般的にはどちらの表記でも問題ないことについて、『私たち毎日新聞の表記ルールではこちらで統一しています』と紹介するようなツイートは反応が良いですね。日頃から文字を大切に考えていて、『どちらの表記にしたらいいのだろうか』と気にしている方が、好んで読んでくださるようです。一番リツイート数が多かったのは、『来るわ来るわ』などの場合は、助詞の『は』ではなく、『わ』を使うというもの。このツイートがきっかけで、一気にフォロワーが3000くらい増えました。投稿する前は『これ、おもしろいのかな』と思ったんですが…。6年近くやっていますが、何がウケるのか、Twitterは全く予想がつきませんね」

(周東淑子/やじろべえ)

■取材協力
毎日新聞・校閲グループ(@mainichi_kotoba)
https://twitter.com/mainichi_kotoba
毎日新聞
https://mainichi.jp/

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